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離乳子豚の下痢を栄養面から考える

離乳子豚の下痢を栄養面から考える

2022年4月21日、ラレマンドアニマルニュートリションは、養豚に関するウェブセミナーを開催致しました。ご参加いただいた皆様に、深く感謝申し上げます。講演の内容について、簡単にご紹介いたします。

講演者:

  • ユルゲン ゼンテック(ドイツ ベルリン自由大学教授)
  • ブルーノ ベルト― (ラレマンドアニマルニュートリション技術マネージャー)

要約

子豚の腸管は、生命活動に必要不可欠なさまざまな機能を果たします。動物の代謝において、間違いなく消化・吸収は重要です。それだけでなく腸管は、免疫機能のための最初のバリアの役割も果たします。
「健康な腸管」は、関連する様々なシステムが相互に作用した結果として得られるものです。関連するシステムには、消化能力・マイクロバイオータ(細菌叢)のバランス・上皮の代謝・バリア機能・機能的な免疫系・抗酸化システムなどが挙げられます。腸管は、子豚の体内における最大の免疫器官です。その腸管の表面は、マイクロバイオータ・飼料由来の抗原物質・外部環境に曝されています。

腸内には、多様な細菌・古細菌・酵母・真菌・プロトゾア・ウイルスなどのマイクロバイオータが豊富に生息しています。マイクロバイオータの構成は、子豚の年齢・飼料・舎屋・健康などの要素に影響を受けます。正常であれば、微生物はユーバイオシスと呼ばれるバランスの取れた状態で存在します。しかしディスバイオシスと呼ばれる好ましくない状態になると、消化機能が悪化し、健康状態と生産成績が低下します。子豚の腸内マイクロバイオータは、母豚のマイクロバイオータに大きく影響を受けます。この概念は、微生物インプリンティング(刷り込み)として知られています。

腸の健康を考える上で、飼料には考慮すべき点が多くあります。特に炭水化物には注意が必要です。炭水化物の主な役割は栄養素とエネルギーを供給することです。しかし炭水化物は胃腸管にも作用するため、子豚の腸内マイクロバイオータの活動にも 影響を与えることがあります。下痢子豚では、炭水化物代謝に関わる遺伝子発現が抑制されおり、 微生物構成も健康な子豚とは異なります。
タンパク質については、飼料に含まれるタンパク質が少ないほど、毒性代謝産物の産生が少なくなり、下痢の発生も少ないことが明らかになっています。高タンパク質飼料は、ヒスタミンの放出も促します。
飼料加工によっては、いくつかの抗栄養因子を取り除くことが出来ます。これは、腸管の免疫反応に変化を与えます。
現在、食物繊維の活用についての研究がますます増加しています。食物繊維は、豚の生理機能や腸管の健康に影響を与えます。繊維を有効に使うことによって、マイクロバイオータと腸の機能に働きかけ、ディスバイオシスのリスクを減らすとともに、好ましい細菌の存在量を高めることが出来ます。繊維は、ムチンの産生や獲得免疫・自然免疫プログラミングにも関係があります。繊維の量と物理構造によっては、子豚の糞の質を良く維持することもできます。
最後に飼料添加物には、マイクロバイオータを制御するだけでなく、免疫系や消化生理にも影響を与えられる製品が多く存在します。

質疑応答

Q1. 離乳後10日間の、理想的な高発酵性繊維と低発酵性繊維の割合は?
近年の知見によると、可溶性繊維と非可溶性繊維を混合することで、常に良い結果が得られているようです。飼料中の可溶発酵性繊維は、マイクロバイオータに影響を与えます。特に酪酸などの短鎖脂肪酸の生成を促し、腸管の恒常性維持や、腸管上皮へのエネルギー供給に貢献します。私の推測ではありますが、非可溶性繊維を1/3、可溶性繊維を2/3給与するのがちょうど良いと思われます。離乳子豚飼料における適正な飼料中の総繊維含量は、可溶性および不溶性繊維の構成割合によって異なります。粗繊維で考えるのは正確ではありませんが、4~5%になると思います。(ゼンテック教授からの回答)

Q2. 離乳子豚における、機能性飼料「ヤング」の推奨給与期間は?
農場での子豚の状態によって異なります。一般的に離乳後2週間はストレス状態にあることが多いので、少なくとも2週間は給与していただきたいです。

ラレマンドバイオテック株式会社では、今後も畜産業界に役立つ情報を発信していきます。
よろしくお願いいたします。

投稿日 May 10, 2022 | 最終更新日 Jul 9, 2023

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