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純粋酵母製品の種類と特徴

純粋酵母製品の種類と特徴

酵母は、遅くとも古代エジプト時代にはパンやワインの発酵に使用されており、古くから人々の食生活の一端を支えてきました。酵母はその発酵特性と栄養特性ゆえに、動物にとっても価値の高い栄養源です。100年以上前から、動物飼料には様々な種類の酵母や酵母派生物が用いられてきました。
酵母は腸内マイクロバイオータ(細菌叢)のバランスを調整し、健康な免疫反応を維持することで、動物の健康や福祉に良い影響を与えます。抗生物質に代わる天然代替物への需要の高まりに伴い、飼料原料としての酵母の使用量はこの20~30年で大幅に増加しています。
畜産市場には、様々な形の酵母を含有する多種多様な飼料原料が存在しています。それらには、どのような違いがあるのでしょうか?そして動物の栄養と健康に、どのような価値をもたらしてくれるのでしょうか?

酵母とは?

酵母は、真菌界に属する単細胞の真核生物です。一般的に、大きさは約10㎛で、核膜と細胞壁、細胞質を有します。酵母は、エネルギー源・栄養源を有機物に依存する従属栄養生物です。
一口に酵母と言っても全てが同じ性質を持っているわけではなく、約60属、1,500種ほどに分類されます。これらのうちで商業利用されているのは、ほんの一部分にすぎません。食品、飲料、パン、飼料に主に利用されているのは、一際優れた発酵特性と栄養特性を持つ、サッカロマイセス セルビシエという菌種です。

サッカロマイセス セルビシエの中にも何千もの菌株が存在し、それぞれ遺伝情報が異なり、それに伴って代謝や活性も異なります。

動物に給与して望む効果を得るには、使用目的に合致した菌株を配合した酵母製品を選ぶことが大切です(図1)。

図 1. 純粋な酵母製品の種類

プロバイオティクスとしての生きた酵母

一般的に生きた酵母(活性乾燥酵母とも呼ばれます)は、プロバイオティクスとしての効果を期待して飼料に添加されます。プロバイオティクスは、「適量を摂取した時に、宿主に有益な作用をもたらす生きた微生物」と定義されています(世界保健機関)。しかし生きた酵母全てが、同じ働きをするわけではありません。特定の動物種に対しての特別な働きは、特定の菌株のみが有しています。また、プロバイオティクスとして大切なことは、製造時から摂取時まで、酵母が活性を保ったまま生きていることです。

プロバイオティクスとしての生きた酵母は、消化の快適さや腸内微生物のバランスに良い影響を与えることで、飼料効率や畜産学的成績を改善させるだけでなく、宿主動物の健康を維持します。抗生物質などの治療を減らす目的でも使用されます。

 

live yeast

不活化酵母の細胞全体

発酵後の生酵母に特殊な処理をすることで、それ以上増殖しないよう、不活化(死滅)させることができます。酵母菌株の種類と製造工程(例えば、乾燥条件等)次第で、最終製品の特徴、構造、成分、有効性が変わります。また用いる不活化処理法(熱、機械的、化学的等)の違いによって、異なる性質の不活化酵母が得られます。

例えば、次のように区別しています。:

  • 自己消化酵母: 自己消化とは、酵母が自身の消化酵素(内因性酵素)によって文字通り自己を消化し、細胞が不活化される過程のことです。自己消化酵母は、食品や飼料の風味と嗜好性を改善する目的で使用されています。

autolyzed yeast

  • 加水分解酵母: 加水分解酵母は、内因性酵素と外因性酵素の両方によって、酵母細胞を分解することで得られます。望むレベルの加水分解を起こすために、実際には特定のいくつかの酵素を製造工程中に添加します。成分が均一な製品を作るためには、厳しく管理された処理を行うことが極めて重要です。

hydrolyzed yeast

不活性の栄養強化酵母

酵母には、微量ミネラル(セレン、クロム、ヨウ素等)を細胞内に取り込む能力があるため、ミネラルを強化した酵母バイオマスを作るのには理想的です。

例えばセレン強化酵母は、飼料用の有機セレン源として重要な存在になっています。このような酵母を製造するには、発酵過程でセレンを発酵培地に加えます。高濃度で品質の高いセレン強化酵母を製造するには、適切な酵母菌株を選び、最適な製造工程を開発することが必要です。

有機形態のセレン(Se)は、無機形態のセレンよりも生物学的利用能がはるかに高く、代謝に対する独自の働きも有します。生物学的利用能の高い有機セレンを摂取した動物では、体内の抗酸化能が維持されるため、暑熱や離乳、輸送などのストレスに対する適切な抵抗力を保つことができます。

 

酵母細胞壁

酵母細胞壁(yeast cell wall,YCW)は、自己消化酵母または加水分解酵母の不溶性画分であり、可溶性画分である細胞質(酵母エキス)を分離することで得られます。酵母細胞壁には、マンナンオリゴ糖(MOS)やβグルカンが含まれています。酵母細胞壁製品の作用機序は、製造工程と菌株によって大きく変わりますが、主に次の4つが挙げられす。:
1. 好ましくない細菌と結合します。
2. プレバイオティクスとして働いて、腸内マイクロバイオータのうちの有用微生物の増殖を助けます。
3. 動物の自然免疫反応を調節し、体に生来備わっている防衛力を維持します。
4. 酵母細胞壁の多糖類が特定のカビ毒に作用を及ぼし、飼料中のカビ毒による悪影響を軽減します。

このような働きによって酵母細胞壁は、消化の健康維持と増体成績の向上を助けます。

酵母エキス

酵母エキス(yeast extract, YE)は、酵母細胞内の水溶性画分です。酵母エキスは、栄養源としても呈味料としても利用されます。タンパク質(>60%)とペプチドを豊富に含有し、ビタミンB群も幅広く含有しています。

 

結論

酵母には幅広い用途と高い機能性があり、栄養価にも優れた飼料原料です。それぞれの酵母製品は独自の特徴を持ち、動物の増体成績や健康に良い影響を及ぼします。特に飼養環境が最適でない場合や、動物が離乳や疾病などのストレスに晒されている時には、酵母の給与が有効です。飼料用酵母には、生きた酵母や酵母派生物を含め、数多くの純粋酵母製品があります。望んだ結果を得るためには、製品ごとの違いをきちんと理解し、それぞれの製品が果たし得る役割に基づいて最適な製品を選択することが大切です。

より詳しい情報をお知りになりたい場合は、お気軽にお問い合わせくださいませ。

投稿日 Apr 27, 2021 | 最終更新日 Jul 6, 2023

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